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東京高等裁判所 昭和25年(う)3007号 判決

控訴人 被告人 伊藤栄八

弁護人 遠山丙市 外三名

検察官 稲葉厚関与

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は末尾に添付した弁護人竹内卯一名義及び弁護人遠山丙市、同矢吹忠三、同竹内卯一、同早川健一名義の各控訴趣意書記載の通りで、これに対し当裁判所は次の通り判断する。

弁護人遠山丙市外三名の論旨第六点について。

原審に於て数名の弁護人が選任せられ昭和二四年九月八日全弁護人の合意により矢吹忠三が主任弁護人に指定せられたところ昭和二五年二月十日全弁護人の合意により竹内卯一が主任弁護人に指定変更せられたこと及びこれに関する刑事訴訟規則第二二条の通知が為されたと認められる証拠がないことは所論の通りである。しかしかかる主任弁護人の変更についての通知を欠いたことによつて被告人の防禦に如何なる不利益をも来したとは認められず被告人もこれに対し少しも異議を述べていないのであるから、この種の手続上の違背は判決に影響を及ぼすものとは認められない。論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 近藤隆蔵 判事 吉田作穗 判事 山岸薫一)

弁護人遠山丙市外三名の控訴趣意

第六点本件記録一四丁に点綴しある昭和二十四年九月八日付主任弁護人指定届によれば全弁護人の合意により弁護人矢吹忠三が原審における主任弁護人に指定せられたことが判り其の後公判においては第三回乃至第六回公判調書に依れば同人が主任弁護人として訴訟行為を為したることを認めることができる。

然るに記録第四七一丁に点綴しある昭和二十五年二月十日付主任弁護人等についての届出での書面に依れば全弁護人の合意に依り主任弁護人を弁護人竹内卯一に変更したることを認めることが出来且つ其の後の第七回以降の公判調書の記載によれば弁護人竹内卯一が主任弁護人として訴訟行為を為したることが判る。

従つて主任弁護人は昭和二十五年二月十日に弁護人矢吹忠三より弁護人竹内卯一に変更せられたるものなるに拘らず本件記録を精査するも何等右変更又は弁護人矢吹忠三の主任弁護人辞任に関する通知を検察官及び被告人或は訴訟関係人に通知したる証跡なく従つて通知せられなかつたものと謂うべく原審は刑事訴訟規則第二二条或は第二十四条に違反して訴訟手続を為したる違法又は右手続を為さなかつたことを以て不当に被告人の防禦権を阻害したる違法があり原判決は破棄せらるべきものと思料する。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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